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キラキラ志事人Vol.2

言葉の森 中根克明さん


― 中根さん、はじめまして。


今日はどうぞよろしくお願いします。



― ご両親はどのような方ですか?

父方は武士の家系で、物心がついたときから「武士として恥ずかしくないように行動しなさい。」ということを常に聞かされて育ちました。母はとても穏やかな人で、叱ったり怒ったりということは一度もありませんでした。いつも笑顔でニコニコしていて本当に天使のような母親でした。











― どのような少年時代でしたか?

当時、叔母がよく本を買ってきてくれました。

「世界ふしぎ巡り」という本がとても面白くて、夢中になり何十回も繰り返して読みました。


この体験が今の活動にもつながっています。同じ本を繰り返して読むことはとても大切で、ぜひ子供たちにもそういう経験をしてほしいと思っています。


もう一つ鮮明に覚えていることは、夕飯の時の父親の話です。父は高等小学校卒なので学歴はなかったのですが、頭が良くて本当にいろいろな話をしてくれたのが楽しかったことを覚えています。










― 学校での成績はどうだったのですか?

知能テストはいつも学校で一番でした。知能テストはあまり当てにならないという話もありますが(笑)、自分の兄弟はそうじゃなかったので、やはり同じ本を繰り返して読んだことと、両親からいろんな話を聞いたことが役にたったんだと思います。









― 高校・大学時代はどのように過ごされましたか?


高校時代は真面目に過ごしましたが、大学は安保闘争後の1970年の入学だったのでまだ残り火がありました。


花が好きだったので千葉大学の園芸学部に入ったのですが、実際に花を育てたり、肥料をやったりすることはとても退屈だったので、学生自治会に参加しました。その活動が楽しくて、執行委員長をやり活動資金を集めるためにダンスパーティを年中やっていました。当時、「筑波大学法案」に代表される社会問題がたくさんあって、学生は何に対しても反対の立場でした。ですので今回のコロナ騒動の時に、抑圧された大学生が立ち上がらなかったのは不思議でしたね。








4年生になってもまったく勉強していなかったので、完成した卒論を提出せずに留年しました。その時間を使って本当に読みたかった本、ヘーゲルとかの難解なやつを朝から晩までずっと読んでいました。この1年でとても賢くなった感じがします。ただ。就職活動はしていなかったので、ギリギリでも受けられるマスコミを何社か受けました。マスコミは作文試験があるので毎日喫茶店に入って12000字を書く練習をしていました。面接でも作文は褒められたのですが、色んな活動をやっていたので最終的には全部落とされましたね。








― その後、どういう経緯で言葉の森を作られたのですか?

全部落ちたので、もう頼まれても絶対にいかない(笑)と思ったのですが、自分に何ができるのかと考えたときに、最後に残ったのが教育でした。作文の勉強を1年間やっていたので、作文なら教えることができると思ったのがきっかけです。学校の事務員として就職し、時間にも余裕があったので引き続き読書をしながら、カルチャーセンターで作文教室を開きました。少しずつ軌道にのってちょうど仕事を辞めようと思っていた時に、彼女(妻)から「中根くん、今何をしているの?」と電話があって。色々話をする中で、「じゃあお互い一人なら結婚しよう。」ということになりました。妻は教員をやっていたので、何のあてもないけれど作文教室を初めても何とかなるだろうと思って仕事を辞めて言葉の森を作りました。




―奥さんとは価値観が似ているのですか?

独立して起業するときによくあるのは、一番身近な人がブレーキになるということですよね。でも妻に「仕事辞めようと思うんだけど。」と相談したら、「うん、いいんじゃない?」と(笑)。そういう意味では価値観は同じかもしれませんね。妻は養護学校の担任をやっていて、不登校の子の面倒をみたりしているような人でした。よく自宅にも不登校の子供達が遊びに来ていました。本当にいい子たちばかりで、学校には通えなかったけれども、みんな立派な社会人になっています。





― 言葉の森が目指すところを教えてください。

これは色々あるんですが、例え話をしますね。昨日たまたま通りがかった近くの小学校で、学校の先生が子供達に体育を教えていました。30〜40人ぐらいの生徒がみんなずらっと並んで、2人一組で100mを走って順位をつけるようなよくある感じのやつですよね。昔、自分もそういうことをやっていたから、それが普通だと思ってしまうんだけど、よく考えるとそれぞれの子供達が自分で走る練習をして、個別にいかに早く走れるかということを教えた方がずっと密度の濃い練習になりますよね?走っていない子たちは、ずっと座っているので1時間の授業で数回走るだけという結果になってしまっていました。


他の教科の授業でも同じで、先生がずっと話をしていて、途中誰かを当てたりするけれども、他の人達はそれを聞いているだけという授業ですよね。そういう集団指導の授業は、時代遅れで、限界に来ていると思います。日本でも大規模な学校では、生徒の数も多いけど先生の数も多いから、クラス単位の授業ではなくて、自分のレベルにあった授業を選択できるところもあるみたいです。ただ、このような事例は例外で、ほとんどの学校は、全員一律に、できる子もできない子も含めて授業するから、先生はどうしても中間ぐらいの子にあわせる必要があります。そこで、大規模校以外でも出来る仕組みとして考えたのが、オンラインの少人数クラスなんです。


言葉の森は今は800人ぐらいの生徒数だから、まだまだ少ないですが、これが1000人とか10000人とかになったら、本当に自分の興味がある科目で、同じレベルの子だけが集まって5人ぐらいで話をして、発表対話型の教育が出来ると思っています。


今後の展望は、国語とか数学とか英語なんていうのは自分でやればいいわけだから、それは程々にして、作文とか、創造発表とか、プログラミングみたいに自分で何かを個性的に作り出すことを主体にしたいと考えています。



― 受験勉強に対してはどのように考えていますか?

中学受験がすごく盛んになっていて、受験勉強のやりすぎによる弊害はみんなが気が付いてくるんじゃないかと感じています。知識の詰め込みでしか対応できない問題がどんどん出題されるから、小学6年生ぐらいになると、勉強の自覚がないにもかかわらず、成績を上げるために無理やり詰め込まれますよね。そうすると中学になったときには、勉強に疲れてやる気がなくなってしまう。だから小学6年生ぐらいの時は、勉強しすぎないというのが大切だと思っています。


今日本の教育は独立起業の方向に大きく舵をきろうとしている前夜なんだと思います。実際東大の入学式でも「独立起業を目指せ。」という話だったみたいですね。大学がそういう方向に切り替わり、社会もものすごいスピードで変革しているのに、変わっていないのは保護者の意識だけという状況になっています。「いい学校に入っていい会社に就職すれば人生は安泰。」みたいな昭和の価値観から抜け出せていない親が多いのではないでしょうか。





言葉の森なんかでも、東大に行った生徒は、化石が好きで、日曜日には必ず化石を掘りに行ってたとか、北大に行った生徒は、蝶が好きで、同じく日曜日には蝶を捕まえに行ってた子もいますね。そういう個性のある子が、大学に行って伸びるんですよね。逆に首都圏の中高一貫校に入って、成績優秀で東大法学部に進学し弁護士になった生徒は、「僕は勉強しか出来なかったからこういう道を選んじゃったんですけど、本当は中根先生みたいに好きなことやりたかった。」と言ってましたね。だから自分の好きな事がある方が将来的には活躍出来るような気がします。


― これからの時代に必要な学力は?

これから必要になる力は創造力、思考力、共感力だと考えています。


世の中で価値があるものは、創造です。資源がたくさんあるとか、人口がたくさんいるとかそういうものに価値はないと思います。高度経済成長時代に必要とされた工業生産力はもう過去のものになっていて、創造力で勝負する時代になっています。この世にないものを作り出す人が、日本の子供達の中からどんどん出てくれば、日本がまた必ず復活すると思います。


次はやはり思考力です。創造力だけで、考える力がないと価値は少ないと思います。やはり、頭が良いなと思う人は難しい本を読んでますね。難しい本を読むということが、思考力を育成する要の教育になると思います。




ペットの鳥さんとお勉強

あと、最後は共感力ですね。日本は他国の人に比べて、共感力が高いことが知られています。例えば誰かが転んで痛がってたりすると「助けてあげよう」というふうに自然に思うんですよね。例えばペットなんかでも、ヨーロッパの人はカッコが悪いから尻尾を切ったり、耳を切ったりということを平気でやるけれども、日本人がそういうことを出来ないのは、「切ったら痛いだろうな。」という共感力があるからなんですよね。その共感力を教育の中で伸ばして行く必要があると思っています。


― 共感力についてもう少し詳しく教えてもらえますか?

共感力は、個人的には日本語力だと思っています。母音言語という日本語の特徴があって、その母音言語だと虫の声や風や波の音も左脳に入るから、生きているもののように聞こえるらしいんですよね。外国の人には、虫の泣き声は雑音として聞こえるみたいですが、日本人は、虫が鳴いているとか、鳥が歌を歌っているとか、そういうふうに自然を音を擬人化して表現することが出来る民族なんですよね。


そういう感覚が発達して、他人に対する感覚っていうのも、自分と同じ様に感じられるようになったのではないかと思っています。「他人の痛みを我が事として感じる」そういう感覚が、日本人が他の民族よりも長けているのは、やはり、母音言語である日本語の力だと思います。


日本語の母音言語を大切にするというのが、勉強の一つの要になるので、英語で話したり考えたりするのではなく、日本語で論理的に考える訓練をすることが大切ですね。


― 学校の役割はどう変化しますか?

学校は遊びに行くところで良いと思います。人との繋がりを意識できるという意味では学校は良い場です。喧嘩したり、意見が衝突したり、人と人が付き合う中でぶつかる諸問題をどう解決したら良いのかを学ぶには最適かもしれません。ですが、今はそれすら出来ていません。喧嘩は駄目だとか。。とにかく、先生は穏便に収めようとして介入しようとするけど、うまくいかない。最終的には当人同士で解決するしか手段がないと思うけれど、それを見守ることが出来ない先生達が増えているのかもしれません。今後は学校ではなくて、様々なグループがあちこちにできて、そのグループの中で人間関係を学ぶようになる社会になっていくのかもしれません。


― 最後に子供達へのメッセージをお願いします。



大袈裟かもしれないけど、個人の利益を大切にするだけではなくて、日本の社会全体の利益を考えることが重要だと思っています。昔の日本人は、個人とか、家族とかの利益よりも社会全体の利益を大切に考えていた人たちが多かったのではないでしょうか。そういうことを言うと変人扱いされるかもしれませんが、これからの世の中は社会全体の利益を優先する方向に切り替えていかないといけないと思っています。日本人には元々そういう感性があるから、そういう流れが出てくれば一挙に変わる感じがします。


約2時間のインタビューでしたが、あっという間の時間でした。大変革の時代に生きている我々にとって、子供たちは未来の希望です。子供たち一人一人が輝ける時代が来ますように。中根さん、本当に貴重なお話をありがとうございました。


言葉の森HP https://www.mori7.com/

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